未来絵図 ー二人で歩むこれからー 
ワインと花と…

 智也の帰国に合わせて、奈々子と新司はホテルA'Zに帰る。もちろん、智也の両親であるオーナーと智衣も一緒だが、智也にも社長にも内緒である。

 帰り早々、臨時の会議があることになり、奈々子と隼が担当者として呼ばれる。"牧田じゃダメなのかよ!"といいながらぶつくさと奈々子の横を歩く。

 奈々子の後ろを歩くオーナーたちに関しては、ふたりとも、ワイン工房の人としかはなしてないので、隼は、王子スマイルで挨拶していた。

「はぁ。もう嫌になる!あのハゲにあうと思うと。」

「お客さまの前で、キャラ崩れてるよ?」

 隼は、オーナーたちに対して慌ててキャラを作り直した。

「松本さんは、もうすぐ着くみたいなんで。それを待てばいいのに。なんか企んでるよな。」

「思いやられる…。」

 奈々子がため息をつきながら、会議室に入る。ニヤニヤ顔のゆきと総支配人が待っていた。奈々子の後ろに控えているオーナーと智衣を、驚き顔で社長は見ている。

「あらっそちらは?」

「九州のワイン工房ーMATSU ーのオーナー夫妻です。この度、契約して頂き、希少価値の高い出回っていないワインを提供していただけることになりました。」

 ゆきの質問に奈々子が答える。ゆきはオーナーと智衣に対して、ふんっと鼻をならし、"あら、そうですか。"と言っただけでまともに挨拶などしなかった。

「ワイン、飲まれますか?」

 奈々子が尋ねると、総支配人とゆきがクスクスと笑い出す。

「嶋田さんは、お酒は飲めないんだよ。」

「支配人。高木さんは知らないんだもの。ショックで倒れちゃうかも。」

 可笑しくバカにしたようにふたりとも、奈々子に視線をやる。会議室にいる他のメンバーは気まずそうに視線を外した。"奈々子さん。気にしないでいいよ。"隼が言葉を投げ掛ける。

「そうでしたね。松本さんの赤ちゃんがいるんでしたっけ?でも、そんなにすぐ分かるかしら。それに、赤ちゃんがいたらそんな10㎝あるピンヒールなんてはかないでしょ?」

 奈々子は、挑戦的な視線でゆきをみる。
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