未来絵図 ｰ二人で歩むこれからｰ

　ゆきは一瞬たじろぐが、それを見た総支配人が助け船をだす。

「自分が相手にされないからって、僻んでるんだろ？みんな馬鹿げたことを言う。松本がお前に気があるって？あるわけないだろ？襲われかけた、他人の手がついた女に？汚れたお前より、綺麗な嶋田さんがいいに決まってるだ……！…ぐぇっ！！」

　総支配人が最後まで言うことが出来ず、気が付いたら、胸ぐらをつかまれ、壁に追いやられていた。

「今の言葉を直ちに訂正してください。」

　冷ややかな視線を向けていたのは、汗だくで息を切らせた智也だった。

「松本さん！…すっごい汗！」

　ゆきがハンカチを取り出し智也に近づき、汗を拭き取ろうとした瞬間。

「触るな。」

　一瞬誰か放った言葉かわからないくらいの低い声を智也が出し、ゆきが出した手を引っ込めた。

「たった１分話しただけで、妊娠したと騒がれるんだ。触られたらなんと言われるか。」

　智也がゆきを見ながら話すが、ゆきは目線を合わせない。"く、くるしい。"智也に胸ぐらを捕まれた総支配人はうめきだし、智也が手を離すと、床に崩れおちる。

「…。社長、ただいま帰りました。」

　一瞬、総支配人を冷ややかな目で見るが、すぐに社長に向きなおり、挨拶をする。

「御苦労様。」

　社長は、智也に優しい眼差しをむける。

「…社長。ゴホッゴホッ。…結局肝心のワインがないんですよ。ここはやっぱり嶋田さんに力をおかしいただかないと。お互いのご両親も納得されてるんですよ。松本が付き合えば上手く行くんですよ？」

　社長は、ゴホンと咳払いをし、"本当に松本の両親は納得してるのか？"とゆきに聞く。智也はその時にはじめて、奈々子の後ろにいるのが自分の両親であることに気付く。目を見開いて驚いている。

「総支配人。保田夫妻のワインは、こちらのワイン工房ｰMATSUｰさんが提供して下さいますので、大丈夫です。」

　奈々子が言うとゆきが反応する。

「あのワインは高級ワインで、日本で扱ってるとこ限られた大社だけ。それに、ワイン工房ｰMATSUｰなんて知らないわ。小さな工房なんでしょ？悪いけど、お帰りいただいたら？」

　ゆきがオーナーたちに対して上から目線で物事をいう。