イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
「ただいまです。体調はどうですか?」
「お陰様で、昨日よりは大分ましです。」


コンロに鍋が乗っている。僅かにずれた蓋の隙間から、チョコレートの匂いがした。甘い匂いの、正体。


「もしかして、チョコレートフォンデュですか?」
「ブラウニーも焼きました。手前味噌ですが」


鈴木さんはくいっとリビングの方を顎で指した。私はぴゅうっと飛ぶように移動して、テーブルの上にあるお皿の中のものを見た。

まるでケーキ屋さんのショーウィンドウの中を、覗いているみたい。表面がしっとりしているブラウニーには、生クリームがトッピングされている。
とっても美味しそうで、私の視野はキラキラと星が降ってきたように、補正されて見えた。


「すごい!本格的!」
「全然、簡単なんだよ。あ、キッチン用品、勝手に拝借しました」
「ご飯は私が作りますね!」
「何日もまともなもの食べてなかったんだ」
「そうなんじゃないかと思いました。食材買ってきたので、すぐ準備しますね」


張り切って私はナポリタンを作った。
唯一、作れるレシピだから。でも、


「おかしいな。昨日のエルボーで舌がイカれちゃったかな僕。」


出来上がったナポリタンをフォークで掬う手を、鈴木さんは早々に止めた。


「鈴木さん、鼻が詰まってるんじゃないですか?」
「いや、味だけじゃない。パスタもやわやわで全然フォークで掬えないのですが。」
「だったらお箸、使います?」


呆れたように盛大な溜め息を吐いた鈴木さんに対し、私は慣れた手付きで黙々とパスタを口に運んだ。
早く、デザートが食べたかったからだ。
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