イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
私は申し訳なさと気恥ずかしさとで、俯いて歩いた。

ときどき擦れ違う女性が鈴木さんを見て目を見張り、それから隣にいる私を採点するような目で見る。
美形な鈴木さんにとてもじゃないけど釣り合わない私は、それを知らしめられたようで、肩身が狭くて、余計と居心地の悪さに拍車が掛かった。

私はちらりと、鈴木さんの横顔を見上げた。

ほとんど項垂れる格好で歩く私を気にするでもなく、鈴木さんはマイペースに歩き続けている。
淡いグレーのシャツに黒のパンツスタイルというシンプルな装いだけれど、それを着用した鈴木さんが街角に馴染めば、雑誌の一頁の光景のようにも見える。

空の一番高いところに向かう太陽が眩しいのか、鈴木さんはやや怪訝そうに目を細めた。
もしかしたらこうやって、自分の都合には関係なく注目を浴びてしまうことに、馴れているのかもしれない。

しばらくして、歩調が緩んできた頃に顔を上げると、ケーキが人気のお洒落なカフェの前だった。


「新作のスイーツが出てるみたいだから。味見しときましょう。」


新作は、季節のフルーツタルトだった。鈴木さんがそれを頼んで、私はチョコレートミルクレープを注文した。
運ばれてきた鈴木さんのフルーツタルトは、ベタな表現だけど本当に、宝石箱の中のように、色とりどりの鮮やかなフルーツが艶々と輝いている。


「うあぁ…!美味しそうですね!」
「ぷ。」
「な、なにか可笑しいですか?」
「興奮しすぎ。あげないよ?」


ついテーブルから身を乗り出した私を、鈴木さんは意地悪そうに上目遣いで見た。


「いーいですよー…。私にはチョコレートミルクレープがありますから」


外方を向いた私を見て、ふっと笑いを帯びた息を漏らした。
それから、タルトをまるで検分するように、フォークで掬ってはじっくりと味わった。

鈴木さんを知らない人が見れば、怒りながらケーキを食べてると感じるだろう。いつもの眠たそうなあの無防備な顔の、一体どこに、こんな真剣な表情を隠していたのだろう。

私はつい、フォークを動かす手が止まった。


「よく、こうやってリサーチしたりするんですか?スイーツとか」
「新作は必ずね。商品開発のヒントになるものがないかなあって」


さすが、商品開発部部長補佐…。いつも昼寝三昧だけど、仕事に関しては真剣らしい。


「そっちはどう?美味しい?」
< 38 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop