イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
呼吸を乱した鈴木さんは、苦しそうに顔を歪めている。


「立てる?ゆっくりでいいから」
「は、はい…」


声が揺れるのは、まだ少し怯えているのと、安心したから。
張っている気を僅かにでも緩めたら、涙が出そうで。それを堪えているからだった。


鈴木さんに支えられるようにして、なんとか立ち上がった私は、肩を支えられるようにして歩き、帰宅した。
パンプスを脱いでホッとしたら、一旦落ち着き掛けた心臓がまた煩くなった。着ているブラウスが振動で張り裂けそうなくらい、ドキドキしている。

私はそっと、さっき男に掴まれた手首を擦った。
もしも、あのタイミングで鈴木さんが来てくれなかったら、どうなってたんだろう…。

ぞっとして、背筋が凍る。


「掴まれたとこ、痛むの?」


冷蔵庫の扉を半開きにしたまま、鈴木さんが私の顔を覗いた。


「ち、違うんです、けど…」


小さく首を振って、胸を押さえる。


「まだなんだか、その、そわそわしちゃって…。ご迷惑をお掛けして、すみません」


頭を下げると、ペットボトルが目に入った。鈴木さんが冷蔵庫から取り出した、ミネラルウォーター。
差し出してくれたそれを、受け取る。あまりにも冷えていたので小刻みに震える手がびっくりして、落っことしそうになった。慌ててしっかりと、両手でペットボトルを持ち直したとき。


「迷惑だなんて、僕は思ってないよ。」
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