イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
鈴木さんは、私の肩を抱き寄せた。
躊躇いがちに、そっと、優しく。


「__っ」


甘やかなカカオの香りが、ふんわりと漂った。

そう、紛れもない。


「もう、大丈夫だから。」


億劫そうに呟いた声が、耳のすぐ傍で聞こえる。

顔中がかっと熱くなる。私は答えられずに、こくりと小さく頷くのが、精一杯だった。


「…っ……」


温かい。
焦燥した不規則な呼吸、汗ばんだ肌の温度。

決してきつく密着している訳じゃないのに、心臓の音が二重になって聞こえる。とくん、とくんと穏やかに刻まれるリズムに耳を傾けていると、やがて私の鼓動もそのスピードに倣うように、静かになってきた。

誰かの体温に、身を委ねることが、こんなに心地よいだなんて。
私は今、初めて知った。

ひとつ深呼吸をしてから、私は俯いたまま体を後退させた。
ゆっくり休んで、と言って部屋に向かった鈴木さんの後ろ姿に、小さくだけど、はい、と答えた。


それから私は気持ちを落ち着かせるために、ゆっくりと時間を掛けてシャワーを浴びた。
リビングの照明は保安球になっていて、キッチンには料理をした後のような食欲をそそる香りが残っている。テーブルに、お皿が一枚置かれていて、湯気で結露したラップの中身はパンケーキだった。


『あ、今夜のデザートは、パンケーにしよう。蜂蜜いっぱいの』


本当に作ったんだ…。
お皿は一枚。一人分。

不意に、鈴木さんが使っている部屋の方を見た。ドアが、閉まりきってない。
ひたひたと、裸足の足音に注意しながら近付くと、私は部屋の中を覗いた。
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