イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
それに思ったより、平気だった。
ここに来るまでは憂鬱だったけど、二人のことを見ても、泣き出したい衝動に駆られることもなく、動揺せずにいられてる。

心を蝕んでいた、どこに向けたらいいのかわからない悲しみが、いつの間にか緩和されつつある。鈴木さんと過ごすうちに。
目まぐるしく、いろんなことがあったから。


「へえ、お祝いはなににしたの?」
「えと、ジューサーです。あれ、ミキサーだったかな?」
「どっちでもいい、いい。あの二人、日浦のアパートで同居し始めたらしいよ。角倉さんが、キッチングッズを揃えなきゃって言ってたから、ちょうど良さげだね」
「それなら良かったです」
「辰巳さん…」


もろきゅうを摘まんでぼりぼりかじる私を、真下さんは感激したように目を潤ませて見つめた。


「偉い!そんなこと言えるなんて」
「え、え!?やだな真下さん、泣かないでくださいよ…!」
「だって…、辰巳さんがあまりにも逞しくて心が広いから……」
「か、買い被りすぎですよ!私なんてそんな大層な人間じゃないですから」


同じテーブルを囲む総務部の社員たちが、私たちの異様な光景を困惑したような眼差しで眺めている。
私は困って、真下さんにお絞りを渡した。


「ありがとう…今夜は飲み明かそうよ、辰巳さん!」
「い、いやぁ…。前みたいに二日酔いになりたくないので、私はほどほどにしておきますね」
「そんな堅いこと言わないで!ほら、角倉さんも飲んでるよ?あの人、お酒が苦手らしくて飲み会には一切参加したことないんだって。うちの社員の中では珍しいタイプだよね。珍しいといえば……」


お絞りで目尻に滲んだ涙を拭う真下さんは身を乗り出して、離れたテーブル席の方を見た。
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