イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
“短い間でしたが、お世話になりました 。 鈴木”
定時になり、仕事を終えた私はとぼとぼと遊歩道を歩いた。今日はちょっと足を伸ばして、人気洋菓子店エクリュに寄って、大好きなチョコレートを買おう。エクリュは久々だから奮発して、おっきな箱入りのを買おう。
この一週間、いろんなことがあったけど、それまでの私の生活って、アパートの部屋と会社を行き来して、毎日飽きもせずに甘いものを摂取してれば良かったんだもの。
それだけで良かった、普段の生活に戻っただけ。
日が長くなったとはいえ、遊歩道をひとりで歩くのはまだちょっと落ち着かない。私はキョロキョロと周囲を警戒していると。
会社の方から、駆け足でこちらに近付いてくる人物が見えた。
「辰巳」
「ひ、日浦…」
避けられてたはずなのに。
私の前で立ち止まった日浦は、都合が悪そうに、伏し目がちに言った。「昨日のこと、謝りたくて」
…昨日?
疑問を抱いている私の目の前で、日浦はぽり、と頭を掻いた。
「同期にさ、あのお祝い選んでくれたの辰巳だって聞いて」
ああ、角倉さんのことだ。
合点がいき、私は両手を振る。
「いいよ、全然気にしなくて」
むしろあんなに自然体だった彼女が、ちょっと羨ましくなるくらい。
聞きたいことが聞ける、言いたいことが言える。そんな関係が。
苦笑しながら日浦は、手にしていた紙袋をこちらに差し出した。
「これ、エクリュのチョコレート。好きだったよな、辰巳」
「え?わ、私に……?」
「うん。受け取って」
「え……」
そう言われても…。
言われた通りにするのを、躊躇う時間が刻々と流れる。見慣れた色の紙袋が、私の側にぐいっとつき出された。
「お祝いのお返しだから、遠慮すんなよ」
「あ、ありがとう…」