イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
私の声と重なったその短い声は、ベンチの奥の茂みの方から聞こえた。


「…っ鈴木さん?」


また頭に葉っぱを付着させて、こちらによろよろと近寄ってきた鈴木さんは、私たちを交互に見て、怪訝そうに目を細めた。


「しょ、商品開発部の……?」


緊迫感のない鈴木さんの登場によほど驚いたのか、しどろもどろに呟きながら日浦が、私の体をようやく引き離す。
間髪いれずに鈴木さんは、私が持っていた紙袋を奪った。

そして、


「これ、持って帰ってくれる?この子、僕のチョコレートしか食べないんだ」


強引に、元の持ち主に押し付けた。


まるで計ったような、いつも絶妙なタイミング。
で、現れたことにまだ驚いている私を尻目に、逃げるようにチョコレートが入った紙袋を小脇に抱えて小走りで立ち去った日浦を見送った鈴木さんは、飄々と言った。


「あんなもんで、君を取り戻そうって気?」
「そ、そんな…。お祝いのお返しです。それなのに日浦の前で、あんなこと言うなんて…」


私は鈴木さんが作ったチョコレートしか食べないなんて約束、したつもりない。
視界を遮るのがうざったいのか、鈴木さんは前髪にかかる葉っぱを手で払った。


「そうやって庇うのって。まだ、あいつに未練があるってことですか?」


手馴れたその仕種を見て、決して鈴木さんは絶妙なタイミングでここに現れたのではなく、逆に私が彼の縄張りにいるのだと、再確認する。


「違います。私はただ、鈴木さんが誤解されたらいけないと思って」
「僕は構わないけど。」
「はい!?でもさっき彼女には…」
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