イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
ウインクみたいに、片目だけを器用に瞑った。
茶色く透き通るような相手の瞳が、前髪が触れ合うくらいの間近に見えて、私は口を半開きにする。


「なっ、!?」
「随分とデカイ独り言で。」
「っ!」


まさか後ろで人が寝てると思わなかったんだもの…!

擦られた頬を、手のひらで隠す。
渇いた涙の跡がかさついて、恥ずかしくて俯く。

その仕草を見て、にっと笑った鈴木さんが、顔に被っていた雑誌を持ってベンチから立ち上がった。不動産情報誌のようだった。


「じゃ、ごちそうさま。辰巳奏さん」


ゆったりとした歩調で去って行く後ろ姿が、どんどん遠退いてゆく。
シルエットだけ見れば、ボサボサの頭とダボダボのシャツのせいで上半身だけやたら大きい。


「…熊の着ぐるみが歩いてるみたい……」


風向きが変わって、噴水の水飛沫が顔にかかったのでハッとした。
時間差で、ちょっと胸焼けがしてきたので、私はチョコレートの箱に蓋をした。

もう姿は見えなくなったになったのに、鈴木さんが去った方向からは、ふんわりと甘い匂いがした。
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