イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
「鈴木さん、正装するとまた印象が違うね!普段ネクタイ絞めてるとこなんて見たことなかったから、見違えちゃった」


真下さんにそう耳打ちされても、背筋が強張ってしまってうまく頷くことができない。

姿勢をきちんとただし、ぎこちない動きで、私はもう一度振り向いてみた。
鈴木さんは周囲から注目を浴びていることなど一切お構い無い、といった様子で、しばらく前方を見据え微動だにしなかったが、おもむろにスーツのポケットから、ごそごそとなにかを取り出した。

テーブルにことんと、それを置く。


「……え……?」


その様子を見ていた同じテーブルの女子たちが、そわそわと目配せし合う。困惑を通り越して、軽く戦慄した目付きで。

真下さんは私の腕を肘で小突くと、突っ込みなさい、と言わんばかりの目で、激しく訴えかけてくる。


「え、えっ…」


躊躇しながらも、私も存分に気になったので、勇気を出して恐る恐る、鈴木さんの肩をポンと叩いた。


「あの、鈴木さん。それ…」


私が指した人差し指の延長線にあるのは、テーブルの上でやたら異質な存在感を放っている、チョコレートシロップ。
パンケーキなんかによくかける、プラスチックの容器に入ったタイプだ。


「どんな料理にでも合いますから。」


私と目を合わせた鈴木さんは、飄々と言った。


「か、掛けるおつもりですか?」
「おつもりです。」
「……。」だ、そうです。正面を向いて座り直した私は、真下さんと碓井さんに視線を送った。二人は顔を引きつらせている。


まさか結婚式のコース料理にまで、チョコレートを掛けようだなんて。さすがの私でもそこまでの奇行は思い付かない。


「使いたかったら、後で貸したげるネ。」


後ろから、囁くような声が、耳に届いた。
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