イケメン上司と とろ甘おこもり同居!?
「うちの会社はなるべく家族持ちには単身赴任はさせないように配慮してる。それは子供の頃に僕が、孤独だったことを父なりに悔やんでるせいかもしれない。だからまぁ、結婚してれば地方に飛ばされないってのは当たってるから、結婚は昇進への近道だって噂が若い社員の間で流れてるんだろうけど、本社にいて昇進するかどうかはまた別の話。当たり前だけど、能力の問題だよ。」


言い終えた鈴木さんは最後にやや呆れたような、短い溜め息を付け足した。

交差点で、減速したタクシーが停車する。ブレーキで、体が前に押し出される。
なるほど、と納得する気持ちと、どうしてという疑問とが、頭の中で攪拌されてぐわんと揺れた。

だって、まだ信じられない。
連れ出されたこの状況も、初めて知る真実も。


「じゃ、じゃあ、引っ越ししようとしてたのは…奥さんと喧嘩して、とかではなく?」
「最近父に若い彼女ができて家に連れ込むもんだから居づらくてさ。実家出ようかな、って思い立ってね」
「え…!?でもあの、毎日一緒にいれば嫌なとこも見えてくるって、碓井さんに聞かれて自分の経験だって答えてませんでした?」
「え、なに?いつの話かよくわからないんだけど、毎日君と一緒にいたいって、思ったから。君に少しずつ自分を晒しながら幻滅されないようにしなきゃ、とは思ってたけど。」
「え……」


歩行者信号が、チカチカと点滅する。
まるで私の気持ちを投影するように。
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