うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜





「おはよう、うっかり姫」

 日曜の朝、待ち合わせた駅前のロータリーに先に着いていた神田が車の前で、そんなことを言う。

「乗って」
と言い、運転席側に回る神田に、

「うっかり姫ってなに?」
と言うと、

「いやあ、また、うっかり僕を信じて、こうして出てきちゃうから」
と言う。

 助手席に乗りながら、
「信じてるよ。
 神田くん、悪い人じゃないもん」
と言うと、神田はシートベルトにかけた手を止め、こちらを見たあとで、

「そういう手もありか」
と言ってきた。

「なに、そういう手って」

「いや、そんな真っ直ぐ見つめられたら、さすがの僕も恥じ入るね」
と言ってくる。

「でも、気をつけて。
 朝日は、そこで、君に対して、不誠実な行いは出来ないな、とか思うような男じゃないから」

「さ、佐藤くんって、そんなキャラだったっけ?」

「あいつ、いつも笑顔だけど、誰のことも信用してないよ」
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