うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜
 



 朝日が勤めている彼の叔父の佐藤医院は個人病院にしては大きかった。

 が、彼の父の病院程ではない。

 日曜なので、ロビーには人気がない。

 そこを覗いていたら、
「気が済んだ?」
と神田が訊いてきた。

「なにか食べに行こうよ」

 うん、わかった、と瑞季が言ったとき、神田のスマホが鳴った。

「もしもし」
と言ったあと、沈黙していた神田は少し迷って、そのスマホを瑞季に向ける。

「え、なに?」

 もしかして、朝日と連絡がついたのだろうか、とそれを耳に当てると、
『おい、神田。
 お前、誰と一緒だ』
という声が聞こえてきた。

 そのスマホを持ったまま、瑞季もまた、沈黙する。

『神田?』

 訝しげに問い返してきたその人物に向かい、瑞季は呼びかける。

「……了弥?」

 相手が黙り込んだ。
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