うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜
「神田くん、実はいい人ね……」
と恨みがましく見ながらもそう言うと、

「ほら、相楽さん、お寿司来たよ。
 ねえ、本当に並でいいの?」
と言ってきた。

「いいの。
 私、海老は生じゃない方が好きだし、イクラもウニも苦手なの。

 うなぎとかは好きだけど」

「じゃ、うなぎ頼んであげるよ」

 すみませーん、と障子を開け、店員さんを呼ぼうとするので、いいよ、と止める。

「もういい。
 美味しいね、此処のお寿司。

 酢飯がほんのり甘くて絶妙」

 ぐずりながらも、パクパク食べているのを神田は面白そうに眺めたあとで、
「……うん」
と言い、笑う。

 なにか今までとは雰囲気が違っていた。

 笑顔なのは一緒だが、前程、なにか企んでそうにない、というか。

 少し打ち解けた空気を感じた。

 ひとつ、秘密が消えたせいかもしれないと思う。

 そのとき、また神田のスマホが鳴って、すぐに了弥の声が聞こえてきた。

『二人とも、昼は食べたのか?』
と訊いてくる。
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