うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜
 



 了弥が瑞季が給湯室へ向かうのを見送っていると、そちらを振り返りながら、神田が言ってきた。

「バラして悪かったけどさ。
 これ以上黙っておくのも、どうかと思ってさ」

 神田を見上げ、
「……わかってるよ」
と言うと、

「お前がなにを秘密にしておきたいのか、わかるんだけど、わからない」
と言われる。

 了弥は渋い顔をして、腕を組んだ。

 エレナの、
『もしかして、課長も自分に自信がない人なんですか?』
という言葉が頭に浮かぶ。

 そうなんだろう。
 たぶん、俺は自分に自信がないから……。

 溜息をつき、
「俺はお前になりたいよ」
といつも何者にも揺らがない友人を見上げて言ったが、彼は、

「いや、僕は今、本気でお前になりたいね」
と言ってくる。

 ん? と見たが、首から部外者が入るときのバスを提げた神田は今の話を打ち切るように、周囲を見渡しながら言った。

「これが会社ってものなんだねえ。
 僕らはほら、学校から出たことのない人間だから」
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