うっかり姫の恋 〜部屋の鍵、返してくださいっ!〜
「瑞季?」
風呂から上がった了弥は瑞季に貸した部屋のドアを開けてみた。
瑞季は慣れない場所では眠れないとか。
夕べのことが気になって眠れないとか。
そういうことは一切ないようだった。
……爆睡か。
側に行き、眠っている瑞季の顔を見下ろす。
その寝顔に笑ってみるが、ふいに腹が立ってきて、ぴしゃりとはたく。
「うう……」
と瑞季が途端に、苦悶の表情を浮かべた。
今の衝撃で、夢が悪い方向にでも転がったかのように。
悪かったかな、と思いながらも、その顔のしかめ方が子どものようで、また笑ってしまう。
まあ……面白いから、もうちょっと見とくか、とベッドの端に腰掛け、呑気に思った。
このときは――。
この油断が命取りだと、過去に戻れるなら自分に忠告するのだろうが。
ともかく、このときは、瑞季を自分の家に引っ張り込んだことで安心していた。