最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「それでも我とノームは、周囲の反対を押し切り結ばれた。我らが盟友、風の精霊『ジン』が道を示してくれたゆえ」

「え? 私の先祖のジン様が?」

「はい。じつはジンも異世界に向かうときに、まわりから大反対されたんですよ。『お前はこちらの世界にいるべきだ』って」

 ノーム様は当時を思い出したのか、少しだけ寂しさの混じった、懐かしそうな表情になった。
 そして大切な宝物を守るように自分の胸に手を当てる。

「そのとき、ジンが言ったんです。『いるべきも、へったくれもあるか。己が望む方向へ吹くのが風の誇りで、信条だ』って」

「ジンは我の知る精霊の中で、最も誇り高き男。そして憧れの存在であった」

 イフリート様がノーム様の肩を抱き寄せ、ふたりは微笑み合う。
 その心から幸せそうな様子を見れば、このふたりの選択と決断は間違っていないと確信できた。

 ……そうか。私の祖先のジン様は、譲れない恋を貫き通した方だったんだ。

 周り中から大反対されながら、しかも二度とは戻れぬ異世界だなんて未知の世界に飛び込むほど、その異世界の女性を愛していたんだろう。

「おはようございます、みなさん」

 振り向くと、モネグロス様とアグア様がこちらに歩いてくるのが見えた。
 モネグロス様がエヴルに向かい合い、真っ先に肝心な質問をする。
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