最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
「キアラさん、エヴルさん、私の水の力であなたたちを神殿の近くまで送り届けましょう」

「アグア様、心より御礼申しあげます。そして偉大なるモネグロス様の御心と御恩に、深く深く感謝いたします。この私の命続く限り、揺るがぬ信仰を捧げると誓います」

 膝を折り、頭を垂れて謝意を示すエヴルをアグア様が促した。

「さあ、急ぎましょう。みんな泉の方へ」

 アグア様が泉の傍らに座り込み、白く美しい手をとぷりと水に浸した。
 するとザアァッと泉の水が大きく立ち昇り、まるで無色透明なカーテンのようにユラユラと揺らいでいる。

 よく見れば水のカーテンの向こう側に薄っすらと、精霊家の領地の風景が映っていた。

「さあ、あの水をくぐってお行きなさい」

 イフリート様とノーム様とエヴルが水のカーテンへ向かうのを見た私は、急いでモネグロス様の元へ近づき、小声で懇願した。

 もう二度とモネグロス様にお会いできないのなら、チャンスは今しかない。

「あの、モネグロス様。あの金粉を私にも振りかけてもらえませんか?」

「はい?」

「あの金粉は、精霊の力を封じるんですよね? なら私の力も封じることが可能なんですよね?」
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