最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 モネグロス様は私をじっと見つめ、軽く首を傾げた。

「キアラは、自分の中の精霊の血を厭うているのですか?」

 正面切ってそう問いかけられた私は、うっと返答に詰まってしまう。
 はいそうです、と答えるのは気が引けた。

 だってそんなことを言ったら、神様や精霊様に、『あなたたちと同じ血なんか嫌だ』と宣言していることになってしまう。
 そんな自分が急に恥ずかしく思えた。

「あの、私、そんな……」

「責めているわけではありませんよ? 種族の壁を越えて結ばれてしまった祖先に対して、わだかまりがあるのは当然です」

「でも本当に私、神様や精霊様を嫌っているわけではないんです」

 精霊家に生まれた者としてずっと神事に携わってきたし、人並みの信仰心ぐらいは持ち合わせている。

 イフリート様とノーム様への信頼は、正体を知ったいまでもまったく変わらない。
 モネグロス様とアグア様だって、初めて会ったとは思えないほど強い親近感を覚える。

 私の祖先のジン様が強靭な意思と勇気を持って、己の愛を貫き通す気高い精霊だったと聞いて、尊敬の念すら抱いた。

 でもだからと言って、『ああ私、精霊と異世界人の血が混じっててホントに良かったわぁ』とは、思えない。
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