最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
ただ、自分であること
 私は息を詰めて階段を眺めた。
 薄暗い穴の下には勿論日光は届かず、奥の様子が窺えなくて、つい尻込みしてしまう。

「こ、この階段を降りていくの? 私、暗い所はちょっと苦手で……」

「うむ? キアラは大きくなってもまだ暗がりを恐れるのか?」

「なに言ってるんですかイフリート。キアラさんが暗いところをこわがるのは、あなたのせいですよ? キアラさんがイタズラするたびに、暗い納屋にとじこめていたでしょう? かわいそうにキアラさんたら、おもらししちゃったんですからね!」

「おお、それは無体なことをした。キアラよ大丈夫か? ひょっとしていまも漏らしているのか?」

「……って言いながら私のスカート捲り上げるのやめてくださいイフリート様! 大丈夫です、行きます! 行くから手ぇ放してください!」

 みんなでカツカツと靴音を響かせながら慎重に石段を下りていくと、前方からぼんやり小さな光が見えてきた。
 どこにも光を取り込むような所などないはずなのに……?

 訝しく思いながら階段を下りきって、闇に眼を慣らしながらソロソロと進むごとに光も大きくなっていく。

 そして、そこに見えた物の素晴らしさに、私は歓声をあげてしまった。

「うわあぁ……!」
「きれいでしょう? ここは地中の『ポケット』なんです。ここでマグマがゆっくり冷えて、宝石の結晶になるんですよ」
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