最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 興奮して叫ぶ私を嬉しそうに見下ろしていたエヴルの表情が、サッと変わった。
 彼は瞬時に腰の剣を引き抜くや、目にも止まらぬ素早さで振り下ろす。
 細身の剣が空を切る音と同時に、キィンと硬質な音が響いて、一本の矢が勢いよく弾き飛ばされた。

「……あら? 田舎騎士にしては大層な腕前ですこと」

「オルテンシア夫人!?」

 驚いて振り向く私の目に、片膝ついてボウガンを構えているオルテンシア夫人の姿が見えた。

 いつの間にか後方には、夫人とティボー様と大勢の兵士がズラッと並んで、すっかり出口を塞いでしまっている。
 ……しまった追い詰められた! まさか後をつけられていたなんて!

「ご、ごめんなさい。宝石たちのざわめく気配が強すぎて、この人たちの足音をかんじとれませんでした」

 オロオロするノーム様を、イフリート様が宥めるように抱き寄せる。
 動揺する私たちをあざ笑うかのように、オルテンシア夫人の甲高い声が洞窟内に反響した。

「それはヴァニス王の剣ですの? 話には聞いていたけれど、まやかしだとばかり思っていましたわ。まさか本当にこんな田舎の神殿に奉られていたなんて!」

 思わず私は、イフリート様たちと顔を見合わせてしまった。
 な、なんでオルテンシア夫人が、ヴァニス王の剣がここにあることを知っているの?
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