最悪な政略結婚を押しつけられましたが、漆黒の騎士と全力で駆け落ち中!
 シーンと静まり返った庭園に、場違いなほど軽やかな小鳥のさえずりが響く。
 神妙な空気が漂う中、モネグロス様が穏やかな声でエヴルに話しかけた。

「今度こそ、あなたに自分の道を選んでほしいのです。王位を望むと言うのなら、私はその道を指し示しましょう。望まぬと言うなら、それもよし」

「……」

「答えを出すために考える時間は必要だと思います。これからあなた自身が望む道を、あなた自身で決めなさい。話はそれからです。……いいですね?」

 モネグロス様が優しく微笑んだ。
 アグア様もイフリート様もノーム様も、納得したように無言でうなづく。

 でもエヴルはうなづきもせず、固い表情で押し黙ったまま、じっと宙を見据えていた。

 その胸の内に激しい動揺が渦巻いているのが、隣の私にもはっきり伝わってくる。

 そして私自身も、大きく動揺していた。
 エヴルがこの国の王様になったとしたら、私たちはこれからどうなってしまうのだろう?

 ……引き裂かれてしまう予感がする。
 私たちの想いは成就することなく、きっと悲しい結末を迎えることになるだろう。
 そんな予感がしてならない。
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