乙女は白馬に乗った王子を待っている

「この後の予定も実は立てているとか?」

「まあね。」

「何ですか。」

「聞きたい?」

「興味はある、かな。」

「さやかちゃんが考えたデートに?」

「そういうわけでもないですけど。」

「この辺りをぶらぶら歩いてウィンドーショッピングだって。」

「あ、なんかフツーじゃないですか。」

「女の子はそういうのが楽しいのかな。カレシに何かいろいろ買ってもらったり?」

それでピンときた。
さやかはちょっとマンガの読み過ぎ何じゃなかろうか?
イケメン専務が地味子を連れ回して、上から下まで綺麗な洋服を買い与え、美容院でばっちりメークを施して、その後、いやがる(ふりをする)地味子をゴージャスなパーティに連れて行く、なんて、シンデレラも真っ青のストーリー展開を妄想したにちがいない。

ないですから。
太陽が西から昇ったとしても、そんなこと絶対起きませんから!!

大体、イケメン専務がなんでわざわざ地味子を連れ回してお高い服を買い与えるんだよ。
そんなことをやるアホな専務がいたら、その会社は絶対つぶれるに違いないと思うゆり子である。

そんなどうでもいいことを考えていたら、何となくムカムカしてきた。

さやかと社長は今ごろどうしているんだろうか。
窓越しに見えるきりのようにもわっとした細かい雨をぼんやり見ていたら、二人の事がふっと頭に浮かぶ。

「ウィンドーショッピングって外、雨ですよ?何か違うことしましょう?」

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