乙女は白馬に乗った王子を待っている

結局腹ごなしに少し動こう、ということになって、二人でボーリングに出かけた。

丸くなった東城が、ボールを転がす姿は、まるでふたつのボーリングがごろごろ転がっていくようだった。
東城は真剣な顔でボールを抱えるのだが、それがまた滑稽でゆり子は思わず笑みを洩らす。

「何、笑ってんの?」

東城は笑ってるゆり子をみて無邪気に聞いた。

「ボールが二つ転がってるみたいだからー。」

「え? ボールが二つ転がってるって、何それ、もしかしてオレのこと?」

「うん……」

一度口にしてしまうと、ゆり子は、我慢出来ないといった様子で、遠慮することもなくお腹をよじらせてクククと笑い出した。
東城は苦笑いをしながら言い訳する。

「しょうがないだろー、中年オヤジなんてそんなもんじゃないかー。ひどいなぁ。」

それでも、余裕のある言い方を必死でしていた。
一方、笑い出したゆり子は笑いを止めることもできず、目に涙さえ浮かべている。げらげらとヒステリックに笑いながらさけんだ。
自分でも何がおかしいんだか、よく分からない。

「……だってぇ〜。ほんと、東城さん、中年のオヤジそのもの〜。
 額にあぶら汗浮かべてるし。頭も禿げ上がってるし、お腹も出てるしさぁ。」

「………そっちだって、トウのたったおばさんじゃん?」

さすがに東城はむっとした顔で反論した。

「そうそう〜。オバサンなの、私も。だから、東城さんにお似合いなのかな〜、なんてね。」

「え?」

「ハハハ。だからね、ボールみたいに丸くなってた東城さんみてたら、私も世間からはボール扱いされてるんだろうな〜ってね。」

「そんなこと言ったら、人はみーんなボールになるわけでしょ、いつかは。」

「そっか〜、みんなボールかぁ。」



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