乙女は白馬に乗った王子を待っている

「さやかちゃんのデートはどうだったの?」

翔太は、高橋とさやかが会っていた事は知っているらしく、どうしても気になるようだった。

「うん、今日もすっごく素敵なレストランに連れて行ってくれたよ。六本木の。」

「へぇー。」

「なんかさー、高橋さんてすっごくおしゃれなんだよねー、今日もチェックのシャツなんか着ちゃっててね、それが芸能人みたいなの。
 何人も振り返る人がいたんだよ!」

まるで、ブランドもののバッグを自慢するか何かのような口調で、それは、多分、さやかは高橋を誰かに自慢したいには違いなかった。

  私の彼って、こんなにイケメンなのよ、
  私の彼って、すごくおしゃれなの、
  私の彼って、いっつも素敵なレストランに連れて行ってくれるのよ、
  私の彼って、社長なの、
  私の彼って、………。

「良かったじゃない。また素敵なところに連れて行ってもらえて。」

翔太のために、精一杯皮肉っぽく聞こえるように言ったつもりだったが、
有頂天になってはしゃいでいるさやかにどこまで通じたかは不明だった。

「東城さんだと、何かピンと来ないけどね。」

悪気ないのだろうが、一言余計なのだ、さやかは。
確かに、合コンのときは、赤ら顔で、げっぷをしてそうな、ハゲでデブのオヤジそのものだった。

しかし、頑張っておしゃれした東城はそこまで酷く言われるものではない、とゆり子は思う。
確かに、ファッション雑誌から抜け出て来たような容姿をもつ高橋の足元には及ばないかもしれない。

だから、「意外とおしゃれだったよ。」とちょっとかばってみても、全く想像できないらしく、「そう?ゆりちゃんはあんまり気にしないから、丁度いいかもね、東城さんぐらいが。」にっこり笑って返事を返された。



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