乙女は白馬に乗った王子を待っている
白馬の王子、馬脚を表す

「今日はどこに行きますか?」

高橋はさやかの手を取って歩き出す。

「今日はどこに行きますか?」

高橋はさやかの手を取って歩き出す。

「高橋さんの行きたいところならどこでもいいですよ。」

さやかはいつものように期待に胸を膨らませて答えた。
今日はどんなデートになるんだろう?

「どこでも?」

高橋が確認すると、さやかはにこにこと、はい、と答えた。

「じゃあちょっと歩きましょう。」

高橋は足取りも軽く歩き出す。
さやかは慌ててついていって隣りに並ぶ。暫くあてもなく歩くと、少しお腹がすいてきた。

「ここで食べましょうか。」

行き当たりばったり歩きながら、高橋が指差した先には吉野家があった。

「……こ、ここ?」

さやかの戸惑った顔などものともせずに、高橋は涼しげな顔で戸をガラガラと開ける。

「はい、どうぞ。」

さやかを中に入れるように促す。
さやかはしぶしぶ中に入って牛丼を食べた。

「さやかちゃんは、ここの牛丼食べた事ある?」

「い、いえ……、初めてです。高橋さんは?」

「そう、良かった。オレはしょっちゅう来るよ。権藤から聞いてない?」

「……何か高橋さんには似合わないです。」

さやかとしては、こんなところに連れて来られたことへの精一杯の抗議のつもりだったが、高橋に通じたかはわからなかった。

話してる間にも牛丼が運ばれて来た。
高橋は、割り箸をぱちんと割って牛丼にぱくつく。さやかもつられて牛丼を口にした。

お腹いっぱいになって吉野家を後にすると、高橋はまた黙々と歩き出した。


 
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