乙女は白馬に乗った王子を待っている

「珍しいじゃない、翔太がドラマの話に口を挟むなんて。」

ゆり子がからかうと、翔太は少し顔を赤らめた。

「なんかイケメン専務にだんだん腹が立ってきちゃってさー。」

「分かる!はっきりしろ、って感じだよね〜。この際、婚約者ガンバレって思っちゃうもん。」

「だよなー、いっそ婚約者と結婚すれば円満解決だよなぁ。」

二人で盛り上がっていると、さやかが怒ったように口を挟んだ。

「そんな、愛のない結婚なんて、絶対ダメ。イケメン専務は有村美香を愛してるんだから、婚約者と結婚なんてできないよ。」

さやかは、すっかり自分を有村美香に重ね合わせているようだ。本気で怒っているさやかを見て、翔太は嬉しそうに笑った。

「さやかちゃんはやっぱり純粋だよなぁ。」

翔太は、今の今まで、イケメン専務に腹立てていなかったか!?
急ににこにこと微笑んだ翔太を見て、ゆり子はなんだかがっかりした。

いくら、翔太とゆり子の気があったところで、二人はそれ以上の関係に発展しそうもなかった。

「ところで、明日、社長とデートするの?」

ゆり子は急に話題を変えた。

さやかは花が咲いたようにぱっと明るい顔になる。返事は聞くまでもないようだった。

3週連続か……、社長もああ見えて、結構マメだなあ〜。
それともさやか相手だからなのかな? 
そう考えて、ゆり子は、目の前にいる友だちの順調な交際を素直に応援していない自分がいることに気がついた。

ゆり子はちらりと翔太の顔を見た。翔太は何とも曖昧な顔をしている。寂しそうな、泣きそうな、それでいて、笑ってるようにも見える顔だった。

「楽しいデートになるといいね。」

さやかに話しかける翔太の言葉が切ない。


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