乙女は白馬に乗った王子を待っている
思わず安堵のため息をはいた時、ピンポーンとチャイムが鳴って、翔太がやって来た。
「よ! ドラマ、見るだろ?」
翔太がいつもの様子で入って来たので、その場の奇妙にぎこちない空気がすっと和んだ。
何の躊躇もなく入ってきた翔太は、つまみの入ったコンビニの袋と久保田を手にしている。
いつも通りで何だかほっとする。
ゆり子は、にこにこしている翔太を見た瞬間、翔太に抱きついていた。
「わ、ゆ、ゆり子さん、……いきなりどうしたの?」
ゆり子の勢いに翔太が体をのけぞらせた。
ゆり子は、そのまま翔太の胸に顔をうずめた。
「……大好き。」
ゆり子はそれだけ呟いて、あとはずっと翔太を抱きしめていた。
「……ゆり子さん、とりあえず、つまみと酒をこたつに置いていい?」
「え?」
ゆり子は顔を上げる。
あと、5センチで唇に触れてしまいそうなほど至近距離に翔太の顔があったので、ゆり子が思わずびびると、翔太は両手をかざして笑った。
「ほら、両手塞がってて何もできないから。」
「あ、そーか、そーだね。」
ゆり子も笑って、翔太がこたつに荷物を載せるのを見ていた。
そこに電話が終わったらしいさやかが入ってくる。
さっきとは一変してにこにこと嬉しそうに笑うさやかは、ゆり子の知っているいつものさやかだった。
「で、社長は何だって?」
さやかはさらに頬を緩める。
「うん。ずっと連絡できなくてごめん、って謝られた。それで、お詫びに一泊で旅行にいかない、って。明日から。」
「旅行!?」