乙女は白馬に乗った王子を待っている

ゆり子がアオムシのようにもそもそと動き出した時。

玄関のドアがカチャカチャと鳴った。

さやかが入ってくる。

さやかも、ゆり子の姿をみてぎくりとしたようだった。

「ゆ、ゆりちゃん……、まだ会社に行ってなかったの?」

その言い方は、明らかにゆり子がいないのを見計らって帰って来たような口ぶりだ。

「うん……。気分悪いから少し遅れていこうかと思って。」

「そっか……。」

それでもさやかの動作はぎこちない。

「さやかは? 高橋さんと会ってたんでしょ。素敵デートで朝帰りなんて、良かったじゃない……。」

言った後、あてつけに聞こえなきゃ良かったんだけど、と心配になる。

「…………」

さやかは黙ったままだ。


オカシイ。


素敵デートしたなら、興奮して機関銃のようにしゃべり出すはずなんだけど。
さらに、さやかをじっと見ていたら、目をきょときょとさせている。
まるで挙動不審の女だ。

「……どうしたの? 何かあった?」

さらにしばらく黙った後、さやかは意を決したようにゆり子をキッと見つめた。
そして、ゆり子の目の前でぱちんと両手を合わせておじぎをする。

「ごめん! ゆりちゃん、ホント、ごめん!」


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