乙女は白馬に乗った王子を待っている
「でもさ、イケメン専務なんてどこで出会うのよ?」
「そうなの。私もね、それ、考えてたところ。やっぱり少しは積極的になった方がいいのかなあ。
ゆりちゃん、誰かそういう人知ってる?」
あくまでもおっとり他力本願なさやかである。
そんな人がいたら、とっくに私が狙ってます―—、と言いそうになって、ゆり子はふと高橋社長の顔が頭に浮かんだ。
さやかは、ゆり子の、あ、という顔を見逃しはしなかった。
「ゆりちゃん、心当たりあるんだ〜。紹介してよ?」
「イヤイヤイヤイヤ、アイツは社長とはいっても、ほぼ潰れかけてる会社だし?
私の給料も出るかどうか分からない状況だよ?」
「でも社長なんでしょ?」
「ほんと、高橋社長はお金ないよ。」
「イケメンなの?」
「うん……、まあ、そうかな。」
「ずるーい、ゆりちゃんばっかり。ちょっとくらい紹介してくれてもいいじゃん、ゆりちゃんのケチ。」
さやかの妄想はすでに膨らみはじめているようで、ゆり子が何を言ってもムダだった。
大体、「社長」とか「専務」と言っても、ピンキリだということさえ全く理解していないようだった。
「……わかった、わかった。じゃあ、今度、社長に合コン出来ないか聞いてみる。それでいい?」
「それ、すっごくいい!社長のお友達だったら、やっぱり社長の可能性高いよねー、あー、何着ていこうかなあ。」
さやかは、浮かれながらタンスの引き出しを開けている。
さやかに注がれるゆり子の目は、いつもにも増して冷ややかだった。