乙女は白馬に乗った王子を待っている
ゆり子はこういう話になると、ひどく浮世離れしたさやかにイライラしてくる。

おっとりしていると言えば聞こえはいいのだが、さやかは大学を卒業した時から言う事がちっとも変わっていなかった。

もしかして、小中学時代、初めて少女マンガを読んできゅんきゅんした時から、変わってないのかもしれない。

世間は、婚活だ、お見合いパーティーだ、と必死になって相手を探しているのに、さやかは未だに白馬(いや、ベンツなのか?)に乗った王子様が自分を救いにやってくると信じて疑っていないのだ。

そして―—、それを可愛いと微笑む翔太にも、何となく腹が立ってしょうがなかった。

翔太も女を見る目がない。

私だったら……、私だったら、頑張って働くし(派遣だけど)、薔薇の花束なんてうるさいことは言わないし、仕事服がスーツじゃなくたってジャンパーだって全然オッケーだし、もちろん、高卒だって真面目に頑張って働いてくれるなら、……全然、問題ないんだけどなあ。(美味しい日本酒の差し入れも期待できるし)

そんなことを思うと、ゆり子はなんだかよけいに惨めになってしまうのであった。


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