乙女は白馬に乗った王子を待っている

「山村さんは、どのようなお仕事が得意ですか。」

「ん〜、前は店のレジやってたんだけどぉ。」

「なんでおやめになったんですか?」

「三日間、会社に行くのがちょっと遅れたんだよね〜。
 そしたら、もう来なくていいって言われて……、ひどいっしょ? 
 あたし、カレシと別れてすっごくショックだったのにぃ、
 30分ぐらいしか遅れなかったんだよ? 首ってひどくない?」

「そうなんですか。」

「給料も良くないし、スケベ親父がすぐに胸とか触ろうとしてくるし、メンドーだから辞めた。」

ゆり子は横で話を聞いていて開いた口が塞がらなかった。

三日連続で遅刻だとぉ!? メンドーだから辞めただとぉ!?

おまえなんぞに勤まる仕事なんぞなーい!

仕事を舐めんなよ。

のど元まで怒りの声がでかかったのだが、当の高橋が熱心に話を聞いているので、ゆり子はプルプルと震える手を握りしめるだけだった。

それからも、月星(るな)は、延々と前の会社の話(主に愚痴)を続け、一通り話すとどこかすっきりした顔で高橋とゆり子の顔を見つめた。

月星(るな)が、黙ると、高橋はおもむろに口を開いた。


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