乙女は白馬に乗った王子を待っている

「で、その高橋社長ってどんなヤツなの?」

さやかが行くとなると、翔太は急に関心を示した。ゆり子の返事をうずうずして待っている。

さっき、話した時はずいぶんぬるい返事だったのに。
あからさまな、この差に地味に凹む。
正直で鈍感な翔太は、ゆり子が自分のことを応援してくれることを疑ってもいない。

ゆり子は、翔太の横顔をじっと見ながら、頬にほくろがあるんだ……、なんてぼんやり思っていた。

何を言おう?
高橋を褒めるべきか、落とすべきか。
ちょっと迷うところだ。

ゆり子は、内心かなり姑息なことを考えて計算している。

「最悪じゃない? 給料払えるかもわかんないのに、私を雇ったりするし、すぐはったりかまして大きなこと言うし。
 しかも、落とせない女はいない、とか。
 大言壮語?っていうの? 見栄っ張りだし。」

「見栄っ張り?」

「ベンツに乗ってんの。」

「スゴいじゃん。」

「ローン60回払いだよ? あり得ないっしょ。
 しかもロレックスはローンが返済できなくて質に入れたんだよ。どんだけ?って感じ。
 なんかねー、今どきありえないチャラさなんだよねぇ。」

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