乙女は白馬に乗った王子を待っている
さやかはそんな二人の心中に全く気付いてないようで、ずーっと、イケメンだ、壁ドンだ、社長だ、専務だ、と浮かれポンチなので、ゆり子はイライラしっぱなしだった。
全く気の毒になるぐらい、翔太は相手にされてなかった。
さやかの条件でかろうじて当てはまるのは、顔がいい、ということぐらいだろうか。
最も、顔がいいといっても、「ブサイクではない」ぐらいのレベルで、「イケメン」というのはちょっと足りない感じだ。
背格好も中肉中背。
ただ、ずっとサッカーをやっていた、というその身体は、感じよく引き締まって、敏捷だった。
社長どころか、高卒の宅配便の運ちゃん。
確かに、さやかの思い描く理想のスペックにはほど遠かった。
でも―—、さやかは肝心なことを忘れている。
こちらにも選ぶ権利があるように、あちらにも選ぶ権利は当然あるのだ。
確かに、さやかのロリ顔とボリュームあるおっぱいはアイドル好みの男子には人気があるのかもしれない。
声も妙な艶がありアニメ好きにはたまらないのではないか。
現に、さやかに言いよってくる男はちょこちょこいた。
ゆり子から見れば、さやかにはもったいない、と思える程のいい男だって中にはいたのだ。
それなのに、さやかは、絶対に妥協しなかった。
それで気がつけば31である。
さやかに惚れる翔太もどうなんだ、と最近は翔太にまで腹が立ってくる。