乙女は白馬に乗った王子を待っている
翔太とゆり子は視線をテレビに移す。

イケメン専務が有村美香のブラウスのボタンをゆっくり外していくところだった。
 
有村美香が真っ赤な顔をして俯いている。

『せ、専務……、こ、こんなところで……』

イケメン専務はニヤリと笑って、

『美香は可愛いな〜、こんなに真っ赤になって。今からオレがたっぷり可愛がってやるよ。』

ベタだ、ベタすぎる……。今どき、レディースコミックの方がまだ気が利いた演出じゃないかと思うぐらいだ。
 
ゆり子はコップになみなみと久保田をついでがぶがぶと飲んだ。
 
美味しい。
 
翔太の同級生に感謝じゃ。

高校時代の大親友が新潟の造り酒屋に就職したおかげで、毎年一級品の久保田を送って来てくれる。
 
味も値段も一級のその酒は、ゆり子にとってはとうてい自腹では手が出せるものではない。

だから、その同級生にも、隣りに住むというだけで、気前良く持参してくれる翔太にもゆり子は感謝していた。
 
「それにしても美味しいわ〜。このお酒。」
 
枝豆との相性も最高である。ゆり子は、翔太が持って来た枝豆のほとんどを食べてしまった。


< 6 / 212 >

この作品をシェア

pagetop