乙女は白馬に乗った王子を待っている
今シーズン、金曜日の夜更けに放映されているそのドラマは、めちゃくちゃ美形でツンデレなイケメン専務が、強引に目立たぬOLを口説く、というストーリーだ。

さやかの魂をぶち抜いたらしく、さやかは金曜日の夜11時には必ずテレビの前に鎮座していた。

「必ず」だ。

ゆり子は大してドラマに興味がないが、何となくさやかに付き合うようになり、帰りの遅い翔太が二人の嬌声を聞きつけて、ドラマ鑑賞に参加するというのが、このドラマが始まってからの金曜日の日課になっていた。
 
何かしら手みやげを携えてやってくる人のいい翔太は、今夜もにこにこしながら、ドラマを食い入るように見つめるさやかを見ながら嬉しそうに微笑んでいた。
 
翔太を横目でちらっと見ながら、ゆり子は小さくため息をつく。
 
結構イイ男だと思うんだけどなー………。
 
ゆり子のそんな気持ちは隣りの二人にはまるで通じていないようだった。


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