雨音の周波数
【3】終わらせてしまった恋
 高校二年に上がり、新しいクラスにもやっと馴染めた頃。読書が趣味だった私は図書館で放課後を過ごすことが多かった。高校の図書館は中学の図書館よりも大きく立派で、蔵書も多かった。

 司書士の人も優しいおばさんで、おすすめの本や新刊の入荷日を掲示されるより前に、こっそり教えてくれることもあった。

 うちの高校では四月の終わりに実力テストというのがある。高一は中学で習ったもの、高二は高一で習ったもの、高三は高二で習ったものをという感じで、国語、英語、数学の三教科のテストとなる。実力テストというより確認テストのほうがネーミングとして正しい気もする。

 実力テストが近くなると、いつもは空いている図書館も人が多くなる。

 二人掛けの席が空いていて、そこに座り数学の問題集を広げた。問題を解いていると、上から「ここの席空いているかな?」と言う声がした。

 見上げると隣のクラスの男子が立っていた。周りを見渡せば、全て席が埋まっている。

「どうぞ」
「ありがとう」

 彼は私の横に座り、スクールバッグから教材を取り出し机の上に並べた。

「あれ、その問題集同じだね」

 彼の方を見ると、私と同じ問題集が置かれていた。

「本当だ。これいいよね、わかりやすくて」
「うーん、わかりやすいんだけど微妙にわからない」

 彼はなんとも言えない渋い顔で言った。

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