雨音の周波数
「どういう意味?」
「俺、数学苦手なんだよね。友達にこれがわかりやすいって、勧めらえたからこの問題集買ったんだけどさ。教科書よりはわかりやすいんだけど、応用問題になるとさっぱり」

 そういうことか。数学が苦手な人っていうのはとことん苦手な人が多い。逆に数学が得意な人はどの教科よりもずば抜けて成績がよかったりする。それが私だ。

「わからないところ、教えようか?」
「いいの?」
「うん」

 彼は「ありがとう」と言って、問題集を広げた。問題集には所々付せんが貼ってあり、蛍光ペンで線も引かれていた。

「この問三の問題なんだけど、なんでこの公式を使うの。こっちの公式でもいいんじゃない?」
「じゃあ、問一の問題がこの公式を使うの何でかわかる?」

 彼は問題集に書き込みをしながら説明をした。それを聞いて、ちゃんと基礎の部分は理解しているのだとわかり、問三の解き方を説明した。

「ああ、そういうことか。教え方上手いね」
「そうかな」
「あ、俺、2‐Cの石井圭吾」
「私は2‐Bの小野春香」


 私と圭吾はこのことがきっかけで仲良くなり、試験近くになると一緒に勉強した。

 圭吾は数学が苦手だったけれど英語は得意だった。そして私は英語が苦手だった。理系の私と文系の圭吾。一緒に勉強をするとお互いの弱い部分を補うことができた。

 そんな時間の中で私は恋をした。

< 19 / 79 >

この作品をシェア

pagetop