雨音の周波数
【4】確信……
 ラジオ局へ行き、ラジオの準備と打ち合わせに取り掛かる。

 濃い二時間を提供するのが私たちの役目。リスナーからの反応もまずまずで安定した人気を誇っている。

 今日の番組宛に届いたリスナーのメールを確認して選別する。そしてパーソナリティーと一緒に、選別したメールの中から番組内で読むものを選ぶ。

 アシスタントディレクターが電話を繋ぐ予定のリスナーに事前の許可を取る。

 ディレクターとリクエスト曲の中から選曲をする。

 全ての準備が整い、怒涛の二時間が始まる。番組が始まった時は心地いい緊張感がブース内に漂う。番組が終われば安心感と徒労感に包まれる。ラジオの生放送はこれの繰り返しだ。

 そして〈匿名希望 東京都 石井 圭吾〉のメールを見ては心をざわつかせるのも変わっていない。

 匿名希望の石井さん、あなたは純粋なこの番組のリスナーさんですか。

 答えてくれるはずもないメールに問いかける。返事も真実も返ってこないのはわかっているのに。


 放送を終え、会社に戻った。パソコンの電源を入れ、イスに深く腰を掛ける。起動中のパソコン画面を無意味に見つめた。

「小野」
「はい」

 佐久間さんが会議室のドアから顔を出し、手招きをしている。

 嫌な予感がする。佐久間さんが個人を会議室に呼ぶときは無理難題を突き付けられることが多い。

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