雨音の周波数
「本当だ、すごいことになってるね」
「ですよね。中島さんの声とラジオドラマと小野さんの相性がいいんですよ。来月も楽しみって声も多いですし」
「じゃあ、来月も頑張らないと。でもその前にレーティング最終日の今日を乗り越えるのが一番ですけどね」

 夏川さんは「そうですね」と言って、ブースの中にいる中島さんの所へ向かった。

 私に話した内容を中島さんにも言っているようだった。

 午後二時。『to place』が始まる。いつも通りの濃密な時間が過ぎていく。二時間放送は、聴いている側と放送する側では感覚が全く違う。放送する側は二時間もあるなんて思えない。ああ、もう終わってしまったと思う。

 今日だけはこの早く進んでしまう時間の感覚が胸を締め付ける。番組が終わってから届く圭吾のメールが気になってしまうからだ。

 番組が終わり思った通り圭吾からのメールを見つけた。


〈今日の放送もとても楽しく拝聴しました。
 また聴きます。今日も一日お疲れ様でした。
 匿名希望 東京都 石井 圭吾〉


 こんなに短いメールは初めてだった。コーナーの感想や日常でのちょっとした出来事が必ず書かれていた。

 今日は時間がなかったのかな。

 読み終わったメールとファックスの処理をスタッフに任せた。

 リニューアル後、初のレーティング期間とあって、つい肩の力が入ってしまっていた。他の人もそうだろう。少し疲れた顔をしている人がほとんどだった。

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