雨音の周波数
 圭吾と話した日から二週間が過ぎた。その間に二つ変わったことがある。

 仕事は相変わらず忙しいけれど充実している。リスナーからの番組評判は上々で、ラジ恋も安定した人気を誇っている。

 ただ、圭吾からのメールが来なくなった。当然のことだろう。せめてサイレントリスナー――メール、ファックスなどのお便りを送らずラジオを聴くだけの人のこと――であってほしいと思っている。随分と都合のいい考えだ。これが変わったことの一つ目。

 二つ目は佐久間さんと付き合い始めた。彼は私と十歳以上離れている。ここまで歳の離れている人と付き合うのは初めてで少し戸惑った。彼は恋愛特有の甘い雰囲気を醸すような人ではなかった。そのおかげで私も変な意識もせず、すんなり彼との交際を続けている。

"いい夫婦になるよ、きっと"

 佐久間さんが言ったこの言葉は当たっているのかもしれない。


 ラジオ局に向かうためフロアを出て、一階のエントランスに降りると佐久間さんがいた。

「佐久間さん、会議長かったんですね」
「ああ、スポンサーとプロデューサーがケンカしたせいで長引いた」
「それは大変でしたね」

 佐久間さんは少し疲れた顔をしている。

「あ、明日の夜空いてる?」
「はい」
「よかった。いいバーを見つけたんだ。一緒に行こう」
「はい、楽しみにしてます」
「うん。ラジオ、頑張ってこいよ」

 佐久間さんに軽く微笑んで「はい」と返事をして会社を出た。

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