雨音の周波数
 私は圭吾の頬にそっと手を置いた。雨で少し冷たくなっている手に反応して、圭吾の肩がぴくっと動く。

「大好きです。付き合ってください」

 思いを口にすると涙が出てきた。

 私の手を包むように握る手はずっとそのままで、鞄を持っている手で涙を拭ってくれた。

「はい。よろしくお願いします」

 その言葉に涙が止まらなくなり、傘を落とさないように気をつけながら圭吾の胸に顔をうずめる。そして私の背中に温かい腕が触れた。

 戻ってこられた。

 高校生の私たちはもういない。あの頃と同じような恋はもうできないかもしれない。それでいい。今の私たちだからできる恋をすればいい。

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