雨音の周波数
「失礼します。残りの感想メールとファックスを持ってきました」

 夏川さんが来てくれたおかげで、私の勝手な推測を断ち切ることができた。

「ありがとう」

 手に持っていた紙を読んだ方の束に混ぜ、夏川さんが持ってきてくれたものと交換するように渡す。

「これ読み終わったやつだから、シュレッダーかけておいてくれますか?」
「わかりました。私、あと一時間くらい居ますので帰るときには声を掛けてください」
「わかりました」

 夏川さんが手にしている紙の束を目で追ってしまう。届いたメール、ファックスはその日に削除、その日にシュレッダー。個人情報に厳しい昨今、当たり前のことだ。

 いかん、いかん。早く感想を読んでここから出ないと。

 それから私はたくさんの人から届いた感想を集中して読み続けた。

< 9 / 79 >

この作品をシェア

pagetop