私の世界で一番美しい疫病神
「は、はじめして……」
「でさぁ~あたしの彼氏がね~」
「キャハハ、やばい。超やばい~」
「あ、あの……!」
「……は?なに?」
ああ、だめだ。
「い、いえ!なんでも!」
……結果は惨敗だった。
当たり前だ。
人って、簡単には変われないんだよ。
「はあ……」
心が重い。
帰りの電車は、朝と違って空いていた。
それが私をセンチメンタルな気分に更にさせた。
明日も大学がある。
当然だ。今日がやっと入学式だったのだから。
電車の窓に映る自分を見る。
泣きそうな顔。ああ、情けない。
着ているスーツがちっぽけに感じた。
大人の背伸びをしているような。
身の丈に合ってないんだよ、って。
「お母さん。私、やっていけるかな……」
小さな呟きは、電車のガタンゴトンと響きに、呆気なく消された。