眠れぬ森の美女
それにしても、本当に私以外誰もいないみたい。
「…誰もいないの?」
そう声を発しても、答える者は誰もいない。
…皆どこへ言ってしまったの?
「こんにちは。…君が…凛音さん?」
玄関の扉を開けると、そこには見たことのない男の人が立っていた。
その彼は真っ白な肌を除くと、上から下まで真っ黒だった。
まるで死神のよう…。
「…家の者なら誰もいないのでお引き取りください。…ってどうして私の名前を…?!」
突然私の名前を呼ぶものだから、驚いて心臓が跳ねる。
「はは。そんなことより…雨も降ってきてしまったし、とりあえず中に入れてもらえないかな…?」
外を見ると、さっきまでの綺麗な夕日が嘘みたいに土砂降りの雨が降っていた。
私が天気に気を取られていると、男は知らぬ間に中へ入ろうとしていた。
「ちょ、ちょっと!!…本当に誰もいないんです。」
それにこんなよく分からない男、家に入れるだなんて…。
この男を家に入れてはいけない気がした。