眠れぬ森の美女
胸に手を当てなくても分かるほど心臓がどくんどくんといっているのが分かる。
「…ふぅ。」
一呼吸置いて、一度落ち着く。
そう、あれは夢。
もう二度と見ない夢。
ふと、窓の外を見ると、長い間寝てしまっていたようで、夕日で空がオレンジに染まっていた。
綺麗な空…。
それにしても、誰も起こしに来ないなんて…おかしい。
お母様やお父様が起こしに来ないのは当たり前だけど、使用人が1人も来ないだなんて。
"チリンッ"
夢の中で聞こえた鈴の音。
その音は玄関の方からのようだ。
しかし、誰も玄関に行く気配がない。
それだけではなく、この建物に人の気配すら感じらない。
…どういうこと?
不思議には思いつつも、鈴の音に誘われるように玄関へと向かった。