眠れぬ森の美女
「自己紹介遅れたけど俺名前はは『ルイ』。」
廊下を歩いていると、彼が自己紹介を始めた。
彼の名前はルイ。
ここから少し離れた大学に通っている学生らしい。
意外と普通な彼に、胸をなで下ろす。
「…俺は凛音さんを助けに来たんだ。」
ほっとしていると、ルイくんが私の目を見てそう言った。
彼の目は真っ黒で、今にも吸い込まれてしまいそう。
「助けにって…どういう…。」
"ガタッ"
「きゃっ…!」
リビングの扉を開くと、奥で物音がした。
…何の音?
「…凛音さん、意外と怖がりですね。」
気づくと私は、彼の腕にしがみついていた。
「…っ!」
私は急いでルイくんから身を離した。
…恥ずかしい。
頬が少しずつ熱を帯び、真っ赤に染まっているのが想像できる。
こんな顔を見られたくなくて手で顔を隠していると、
「…可愛い。」
と、彼が私の手を避け、愛しいものでも見ているかのようにそう言った。
その時、ふと彼の笑顔が頭に浮かんだ。
見たことない満面の笑顔。
ルイくんを知ってるはずなんてないのに…。
何故かこのやり取りをものすごく懐かしく感じた。