眠れぬ森の美女
「森の奥深くにあるお屋敷。そこには4人の家族と使用人達が幸せそうに暮らしていたそうです。」
暗闇の中、ルイくんは淡々と話を続けた。
「…ある日を堺に彼らの幸せな暮らしは一変した。」
…ルイくんったら、何の話をしているの?
なかなかつかない部屋の灯り
暗闇に響く低く不気味なルイくんの声
よく分からない殺人事件の話。
これらがより一層、私の胸に不安を募らせる。
「そのある日は今日みたいに雨や風が激しく、ひんやりとした不気味な日だった。」
……ゴロゴロゴロ……
嵐はひどくなる一方で、私達をこの家に閉じ込めたと言わんばかり。
「滅多に人の来ないお屋敷に、その日は3人の男達が立ち寄った。
男達は
"この天気だ。道がふさがって森を出ることが出来ない。今晩だけでいいから泊めてくれ。"
そう言って、びしょ濡れの体を震わせながらお屋敷に1晩泊めてもうよう頼みに来たのだった。
そのお屋敷の主人はたいそう人柄のいい主人だったらしく、快く彼らを屋敷に泊めることにした。」
…そんな訳ない。知ってるはずがない。
それなのに何故か頭にその光景がぱっと浮かんだ。
男達を案内するお父様。
嬉しそうに案内される男たちの後ろ姿。
……その男達の後ろ姿が夢に出てきた男達と重なった。