love square~四角関係なオトナ達~
⑨同じ味
目が覚めると、辺りは暗かった。


微かに香るムスク、ここが琉偉の部屋だとわかる。


「琉偉、いる?」


「はい、ここに」


ベッドの脇から手が伸びる。


その手を掴んで、あたしは重なり合った手を自分の胸に引き寄せた。


「姫葵さん…?」


「あたし、生きてるね…?」


「はい」


「春流も生きてくれてる。命って、尊いね?」


「そうですね。1人の命はその人だけのものじゃない。誰かに支えられ、守られている命です」


「うん…」


「私の昔話でもしましょうか」


「うん。聞かせて?」


琉偉は明かりもつけずに、あたしの胸に手を置いたまま、静かに話を始めた。
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